コラム

【寄稿「お客様のために」という企業理念は、海外人材には伝わらない。】

一般社団法人海外人材ビジネスコミニケーション推進協会(略称GBC)様のウェブサイトに、山崎が寄稿いたしました。

(以下全文)

「お客様のために」という企業理念は、海外人材には伝わらない。

はじめまして。

企業のCSR・SDGsへの取り組み支援を行っている司法書士の山崎梨紗と申します。

GBC代表めぐみさんとご縁があり協会員となり、今回、掲載の機会を頂きました。

これから海外人材の方々に活躍していただこうと考えている経営者のあなたに、

世界共通レベルでの良い企業(真のグローバル企業)になって頂き、世界中の優秀な人材から選ばれる企業になっていただくためのコラムを書いていこうと思います。

どうぞよろしくお願いいたしますね。

バイト仲間の留学生たちと働いて感じた「普通」の違い

さて、代表からGBCのお話を聴いて一番に思い出したのは、

学生時代に、とある餃子屋でアルバイトしていた頃のエピソードです。

アルバイト仲間にミャンマーからと中国からの留学生がいまして、

そこの大将が留学生について、よく愚痴をこぼしてたんです。

「あいつらは学業優先だからテスト前はシフトに入らない。」

「あいつらは仕事の途中でも時間きっかりに帰る。お客がまだいるのに。」

・・・って。

まあ学業優先なのは当たり前なんですけどね。

でも大将のそういった発言の裏にはきっと、

「『普通』はシフトの時間が終わっても区切りがいいところまでは残って仕事するだろう。」

という価値観があったんだと思います。

つまり、日本人なら当然そうするだろうって。

(そして実際に、日本人スタッフはそうしていました)

こういう問題は全国で毎日のように起きています。

たとえば、あなたの会社に海外人材が加わってくれた時にも、

こちらがコミュニケーションについて何の工夫もしない状態で、向こうが日本人スタッフと同じように振舞ってくれることを期待してしまうと、

同じようなトラブルが起きてしまうのではないかと予想します。

今考えると、例の餃子屋の大将は

区切りがいいところまで残ってほしいなら「残ってほしい理由」を言葉で伝えないといけなかったんです。

(もちろん残業代についてもきちんと話さないといけないですね)

お客様のために全力を尽くすって、具体的にどこまで?

「働く」に対する考え方や、「働く」の優先順位って、国によっても全然違います。

たとえば日本企業がよく謳っている理念やメッセージに

「お客様のために全力を尽くします」

というようなものがありますが

「お客様のために全力を尽くすって、具体的にどこまで?」

と海外人材から聞かれたときに、あなたは説明できるでしょうか。

目の前のお客様に対してどこまで尽くすのか。

ここを従業員一人一人の判断に任せてしまうのは、とてもリスクが高いことです。

たとえば

一人のお客様の対応につきっきりになって他のオペレーションを疎かにしてもいいのか、とか。

お客様から個別のお願いへの対応はどこまでしていいのか、とか。

自社の行動規範というものをしっかり言語化し、

自らも体現することをもって伝え続けないといけないと感じています。

それにはまず、海外人材の受け入れ前に、

自分たちが自分たちの行動規範を明確にすることがスタートですよね。

今考えたいのは「お客様のために」と「社会性」との兼ね合い。

あとは、この時代において欠かせないのは、

「お客様のために」と「社会性」との兼ね合いの問題です。

たとえばバイク便。

急ぎの書類などをピックアップして、先方に届けるためにバイクを走らせます。

が。

ピックアップ中、お客様の事務所前に停車させていて地域の生活道路を邪魔してない?とか。

毎日毎日、近距離をバイクで走らせまくっていて環境に負荷かけてない?とか。

いくら急ぎの書類でも、排気ガス出してまで急ぐ必要ある?paperlessじゃだめなの?とか。

(言っておきますがバイク便に何の恨みもありません)

バイク便などは、まさにお客様のために尽くすサービスだと思いますが、

じゃあお客様さえよければ、社会とか環境はどうでもいいのか?

という視点が「社会性」です。

現代は特に、企業が市民性や社会性を求められる時代です。

世界中のどんな企業も、社会や環境への影響を無視して経営活動をすることはできません。

そこで今後、海外人材から選ばれる企業になっていくためには、

「お客様のために」を超えた理念や行動規範が必要になってくると考えています。

とはいえ、必ずしも難しく考えなければいけないことはないと思うんです。

(個人的には、アイデア出しは大喜利のようなものだと思っています。)

たとえばバイク便の会社だったら、

「お客様のピンチを救う最速のサービスを提供するが、高価格帯にすることで頻繁に利用できないようにし、

頻繁に利用する企業ワーストランキングを年に1回発表することで環境負荷の低減に寄与する」

というメッセージを謳っている会社なら、

「面白い!良い企業!!」って思いませんか?

社会性の発想のコツは、本業から離れずに、というものです。

そしてお気づきかもしれませんが、優れた理念は事業を再構築します。

このバイク便会社がこの理念を掲げることに決めたら、実際には辞める事業もあるだろうし、新たに始める事業も出てくるということですね。

(理念を考えるということは、事業を考えるということとイコールです・・・という話はまた次の機会に。)

今こそ「お客様のために」を超えた理念を。

自分たちが起こす社会への悪影響をできるだけ減らしながら、

自分たちの持つ社会への良い影響を研ぎ澄ましていく。

そういった理念を持ち、実際にもそれを経営の軸とすることが

世界共通の「良い企業」になるために必要なことです。

本業でお客様のために貢献するのはもちろん

その先の社会への影響まで見据えた経済活動ができる企業。

そして自分たちの社会的価値を適切に言語化(理念化)することで

内部的には優秀な人材を確保しつつ、その働きがいやコミットメントを高め、

外部的には価値観で顧客を引きつけ、継続的な利益をきちんと確保する企業。

それが真のグローバル企業であり、優秀な海外人材からも選ばれる企業なのではないかと私は考えています。

山崎 梨紗